これは犬がまんまと飼い主を出しぬいた笑い話です。
わが家のビーグル、ダービーが、私の書斎とキッチンのあいだを弾むようにいったりきたりしていました。
なにがあったのだろうと、私はパソコンの前を離れて見に行きました。
ダービーは、私の妻の猫、ロキをいつも気にしていて、自分の短い足には高すぎるテーブルやカウンターに、ひらりと跳び乗れる猫をうらやんでいるようでした。
そしてわが家のほかの犬たちと同様、彼はキャットフードが好きで、すきあらば猫の皿からかすめとろうとしていました。
そこで犬たちのおやつにされないように、私たちは口キの食事用の皿をキッチンカウンターの上に置いていました。
そのときも、少し前にロキに食べ物をあたえたばかりでした。
カウンターは高いので、ものぐさな猫が必死で跳び乗らなくてもいいように、小さなプラスティックの踏み台を置くこともあります。
だけど、この踏み台は高さが低いので、食い意地の張った足の短い犬がこれに乗っても、カウンターにはとどきません。
いつもどおり、ダービーはロキの食事の儀式に興味津々で、私がキャットフードをロキの皿に入れるとき、そのようすをじっと眺めていました。
そしていつもどおり、彼は興奮と期待の入りまじった声をたてていました。
私がようすを見にキッチンにいったのは、猫がカウンターから飛び下りた直後でした。
ダービーはカウンターを見上げたあと、猫に目をやり、つぎに私を見てから、じつに奇妙な行動にでました。
カウンターの下を掘るような動作をしたのです。
私か上から見下ろしても、なにも見えませんでした。
「なにが言いたいんだい、ダービー?」私は彼に訊ねました。
彼はまた私を見て、ふたたびカウンターの下を狂ったように掘りはじめました。
私は近寄って下を眺めたが、やはりなにも見えません。
ダービーは一瞬手をとめましたが、前にもまして熱心におなじ場所を引っかきはじめました。
彼がなにを取ろうとしているのか、間近に寄って調べるために、とうとう私は四つんばいになりました。
そのとき不意に私はなにかが自分の背中に乗る気配を感じ、目を上げると、カウンターに乗ったダービーが、猫の食べ残しを大急ぎでかきこんでいる姿が見えたのです。
この一連のできごとには、さまざまな解釈がつけられるでしょう。
こまかいことにこだわらずに考えれば、
ダービーは猫が踏み台を使うのを見ていたが、自分にはもっと背の高い踏み台が必要だとわかっていました。
そして彼は、自分がなにかに熱中していると、私がようすを調べにやってくるのを知っていました。
というわけで、
彼が意識的に計画していたとすれば、彼の計略はいたって単純です。
私をカウンターのそばでしゃがみこませ、私を背の高い踏み台がわりにすること。
これはあれこれ考えあわせた私の推測であり、小さな犬に高度な意識と推理力を認めることになります。
科学者の私は、そんなことが彼の頭の中に行き交ったという証拠はないとわかっています。
いっぽうで、それが彼の頭の中になかったという証拠もないのです。
まんまとダマされた心理学者としての私は、犬は優れた思考力と知能を持っていると考えると心は慰められます。
『犬も平気でうそをつく?』スタンレー・コレン著より引用
いかがでしょう?
ダービーくんは、なかなかの役者ですね!
ワタシも我が家のビーグルには、お芝居で何度もダマされました。
北海道にある我が家、氷点下20℃になろうかと冷え込んだ朝でした。
当時、2歳のビーグルのチャンスが外に出た途端にビッコを引き始めました。片手を持ち上げプルプル震えています。
手をドアにでも挟んで骨折してしまったかと本当に心配しました。
ところが、散歩を中止して家の中に戻ると嬉しそうに走り回ってるではないですか!
この時、初めてチャンスにダマサれたことに気づきました。
初めて飼った犬ですから、まさか犬が芝居するとはまったく考えてませんでしたのであっさりダマされました。(^_^;)
あなたの愛犬はどんなウソをつきますか?(^^)