コディーという名のアラスカン・マラミュートの子犬は、食べ物に強いこだわりがありました。
(アラスカン・マラミュートは、エスキモーのマラミュート族が長期にわたって飼育していた労働犬)
コディー(子犬)は、アラスカのジュノー市郊外に住むブリーダから、生後七週間たらずのときに買いとられ、貨物機でシアトルまで運ばれました。
新しい飼い主エドは、到着したコディーを見て、兄弟たちから引き離すのが早すぎたと感じました。
大きな音のする飛行機(冬で空も荒れぎみだった)で知らない場所に連れてこられ、仲良しの兄弟から切り離された、ということが重なって、子犬は心に傷を負い、怯え、不安に襲われていたのです。
エドは子犬用のドライフードをあたえようとしましたが、コディーは食べようとしませんでした。
缶詰のドックフードにも口をつけず、焼いた牛肉さえもだめでした。
ミルクも気がなさそうに、ほんの少しチャピチャピすするだけで、エドは心配になりました。
翌日、コディーを獣医に診せましたが、どこも異常はありませんでした。
獣医からは「お腹がすいたら、食べるようになりますよ」と言われました。
エドはそれでも安心できず、ブリーダーに電話をして、コディーの母親がなにを食べていたかを尋ねました。
母犬はおもに、女性ブリーダーの夫が釣ってきた魚(凍ったままのことが多かった)を食べていたのです。
ブリーダーの助言で、エドが小さく切った生鮭をあたえると、子犬はほっとしたように、自分になじみのあるこの魚をむさぼるように食べました。
その後エドが魚にドライフードを少しずつまぜてやったおかげで、コディーはしだいに魚中心の食事から抜け出しました。
現在、コディーは食べ物と名のつくものならなんでも、よろこんで食べています。
猫のみたいな犬ですね。
『犬も平気でうそをつく?』スタンレー・コレン著より引用
犬でも育った環境によって魚が好きになるようです。